事業用物件の原状回復について
投稿日 = 2006/12/21
題名 = 事業用物件の原状回復について
お名前 = デザイナー
ご相談 =
私はデザイン事務所を立ち上げる為、5日後に初めて事務所の契約をする予定の個人事業主です。
まだトラブルになっている訳ではないのですが、後で揉め事の種になりそうな点は少しでも解消しておきたいと思い、ご相談をさせて頂きました。内容は主に、退店時の原状回復についてです。
まず内見時に、管理も兼ねた仲介業者から言われていたのは「事務所なのでどんな内装にしても良いが、出ていく時に元あった状態に戻してくれれば良い」というものです。
これはどんな物件を借りる時でも同じ言い方をされますが、私は今まで自宅兼仕事場として使う住宅の契約しかした事がありません。事務所物件での原状回復のとらえ方については、業者と最初から差がある事は分かっていましたので、重要項目説明書や契約書の案をあらかじめ頂いて、疑問に思う点を担当者に質問してきましたが、答えがいつも曖昧で、原状回復の「原状」についての定義がはっきりせず、少し不安な点を残したまま契約にむかっています。
契約書案の原状回復の項目には、
「乙(筆者駐※借主)が本契約の終了に伴い、甲(筆者駐※貸主)に対し本件貸室の明渡しをする場合、乙が施工、設置した造作設備及び乙の故意、過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用方法等による汚損、磨耗した床、壁、天井等の造作設備等は乙の負担を持って撤去修理して明渡日迄に契約当初の原状に復してから明渡さなけくてはならないものとする。(以下略・原文ママ)」とあります。
退店時の保証金の償却(10%)の意味や、工事からすでに半年経とうとしている内装を担当者が口頭では「新品渡し」と表現している意味が解らなかったのと、上の文章が、ポイントになる句読点を何処で切るかで微妙に解釈の変わる書き方になっているのに疑問を持ちましたしたので、担当者に対し以下の様に質問をしてみました。
**************************************
撤去修理の際の当方の費用負担の範囲は、箇条書にすると、
「乙が施工、設置した造作設備」の撤去。
「乙の故意、過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用方法等による汚損、磨耗した床、壁」の修理。
「天井等の造作設備等」の撤去、という分け方で良いでしょうか。
そうすると、通常の使用に伴う経年変化や損耗については貸主さまの維持負担になると思いますが、
その後の「明渡日迄に契約当初の原状に復してから明渡さなければならないものとする」と言う点については、
それぞれの負担の境界をもう少し明確にしたいのですが、その基準はどんなものですか。
この物件について「経年変化・通常損耗」と「善管注意義務違反」の違いのわかる具体例や
「床」「壁」「天井」など内装の償却期間などのガイドラインなどがあれば教えて下さい。
**************************************
それに対する担当者の答えを私の記憶から要約しますと、
「退店時に必要な状態は、クリーニングされた水周り、新品に張替えられたタイルカーペット・壁のクロス、ペンキが塗替えられた天井パネル、補充された蛍光灯等」「“原状”をいちいちはっきり決める事が出来ない」と言う曖昧な答えしかもらえませんでした。
借主によって、個別に契約書の内容を作り直すのは大変だからなのかもしれませんが、最初から「新品にして退去」と書かないのは何故なんでしょうか?借主が耳障りの良い書き方にしておいて、後で文句を言われても解釈の違いで済ませる為なんでしょうか?
色々質問しても担当者は「解りづらいかも知れないが、うちも弁護士に書かせていて法律上は問題ありません」と的外れな事を言うだけで、埒があかなかったので、今回は契約書の文言自体はそのまま受け入れるつもりですが、原状回復工事の仕上がりの合否は、貸主や業者しか判断できないだけに、何の為の契約書なのかと疑問が残りましたし、不公平な感じがしました。
また、この物件は募集に「事務所内装渡し」となっていて、実際の内装は天井が中古パネルにペンキ塗り、壁がビニールクロス、床がタイルカーペットの仕上げです。
私が「保証金の“償却”と言うからには、内装に対して減価償却の考え方があるからでは?」
「ならば退店時のリフォーム費用は、償却期間に応じた負担にするか、未入居の期間の償却分を差引く事はべきでは?」と問うと、
担当者は「条件はあくまで“新品内装”としての扱い。中古なら最初からそう設定する」
「事務所物件の貸主には、どんなテナントが入るか分らないリスクがある。保証金はその為に償却する」
「“償却”とは内装のみに限って事ではなく、色々な形態の店鋪などの使用による建物の劣化に対する意味も含んでいる」からそれは出来ないと言うので、
私が「占有部分に対する保証にあてているのは分るが、建物まで含めるのはちょっと強引に感じる」と返すと、
今度は「礼金と同じで退店時に『お世話になりました』という意味合いです」と言われました。
次に、私は入居の際に床のカーペットだけは張替えようと考えてるので、
「最初のカーペットを厳重に梱包した上で保管し、原状回復時に使用していいですか?」と訪ねた所、
「その時になってみないと、何とも言えない」と、また答えてもらえませんでした。
色々と聞いたので、担当者の心象を悪くしてしまったんでしょうか。保証金の償却の考え方に合意し、事務所内装に減価償却・通常損耗の考え方を適用せず、工事後半年経った「新品渡し」内装を「新品返し」するという考え方に合意すれば、この提案には何の問題も無いと思っていたので、私には答えて頂けない理由が分りませんでした。
こちらとしても疑問が解消されず、途中からは面倒臭そうに対応されて保管の条件などを詰めようとする姿勢が見えないので、家賃が近隣の相場より割安なのを差引いても、担当者の誠意が少し足りないように感じてしまいます・・・。
私は、業者に対して非常識な事を聞いているのでしょうか?
私としては、カーペットの回復についてだけ、きちんと許可を頂ければ他には不満はありません。
この場合、さらにどの様な提案をすれば、担当者にも納得してもらえるでしょうか?
ちなみに、貸主さんはご高齢らしく所謂「鶴の一声」は期待出来ません。
諸々一任されているその担当者とは、これからもわだかまりなくお付き合いしていきたいと考えます。
うまくまとめられず、長文になってしまい申し訳ありません。
契約書の提出が近づいているので、簡単でも一言アドバイスを頂戴できれば幸いです。
どうぞよろしくお願い致します。

早速メールでのアドバイスを頂きましてありがとうございます。また、上手く要望がまとめられずご迷惑をおかけしました。
私の要望をまとめますと、以下の通りです。
1.原状回復の工事費を節約したい為、既存のタイルカーペットを保存し退去時に敷き直す事を、認めて頂きたい。
2.管理業者に対し、どの様に説明すれば納得してもらえるのか、プロのご意見を伺いたい。
と言うものです。
色々と釈然としない事が多かったものですから、主旨と関係疑問点をぶつける形になってしまいました・・・。
改めましてご教授のほど、どうぞよろしくお願い致します。
投稿: デサイナー | 2006年12月21日 (木) 03:14
少々、誤解されたようですね。
お伺いしたかった「貴方の要望」は、
「2」ではなく、「1」のような、
●その物件を借りるにあたっての要望
ということでした。
事業用の契約の場合、
http://fudosan.jp/cgi-bin/soudan/wforum.cgi?mode=allread&no=4044
のように、
●基本は契約書の内容に従うこと
になります。
今回、貴方の要望をお聞きしたのは、
●契約の内容は、交渉によって決める
ということになりますから、
●決めたことをきちんと契約書に明記する必要
があります。
つまり、一番大事なことは、
●その物件を借りるにあたっての貴方の要望を、
きちんと契約書に盛り込むための交渉すること
になります。
さて、そうなりますと、貴方の一番の問題は、
●一時撤去したカーペットを保管し、
貴方が退去する際に再び元に戻すという処理を、
原状回復として認めて欲しい
ということになると思うのですが、
確かに、この要求は、仲介業者は困るように思われます。
(保管状態、保管時の経年変化なども考えますと、
返却時に、そのカーペットが、
貸した時と全く同じ状態にあるという保証をすることは、
難しいでしょうね…)
また、貴方が感じていらっしゃる「曖昧さ」は、
これは何も一方的に貸主に有利なものではありません。
例えば、本当にこと細かにやるのであれば、
●電源スイッチのカバーは、深さ××mm以下は、
日常の経年変化とするが、それを上回る場合は、
借主がわで新品交換するものとし、
その場合の交換部品の型番は、××社製の××以上の機種にし、
万一、その機種が廃番になっている場合は…(以下、省略)
というようになってしまい、とても煩雑になりますよね。
もちろん上記は極端な例ですが、契約内容に関しては、
●一方的に不利と思われる部分は無いか?
●あった場合は、不利な部分を改善する交渉をする
というチェックこそ重要であって、
漠然と書かれている「原状回復」については、
●一般の通例に従う
という形になるでしょう。
(もし、不当な原状回復を要求された場合は、
法的手段に訴えることになるでしょうが、
最終的に裁判になった場合は、特別な契約を結んでいない限りは、
当然、一般の通例を元に判断されるべきものだと思います)
今回はデザイン事務所ということですから、
飲食店などとは異なり、大きな改装や建物自体への影響も無いでしょうから、
原状回復の最大値は、
●壁や天井のクロスの交換
●カーペットの交換
などになるのではないでしょうか?
(しかし、これを契約書に明記させることは、
おそらくできないと思います。
その理由は、例えば貴方が事務所として借りた後、
一般的に考える以上の大幅な改造をした場合、
明記してしまうことによって、
貸主側は、本来、
希望している原状回復を請求できなくなってしまうからです)
…と、長くなってしまいましたが、
貴方の場合は、仕事の特性上、非常に良い方法があると思います。
例えば、
●借りたときの現状を、デジカメで撮影し、
それをまとめた賃貸開始時の現状報告書を作成しておく
●その現状報告書を、相手方(貸主・不動産事業者)に見せ、
契約書の添付書類として明記し、相手方の押印をもらう
と言うような方法を取れば、
退出時のリスクをおさえることができると思います。
これを認めさせるには、貴方のデザインセンスと、
交渉センスにかかってきますが、
「私(=貴方)が壊してしまったりした場合に備え、
今の状況を撮影しておいた方が良いと思ったので、
貸主さんたちにもメリットが大きいと思うので、
是非、これを正式な添付書類にして欲しい」
というように、相手側にとってのメリットを全面に伝え、
何とか認めていただくのが良いと思います。
そして、退出時は、カーペットも賃貸開始時を維持できる状態で、
保存できているのであれば、保存した元のものを利用し、
「新品でない」と文句が出たら、
契約内容(=新品にすべきとは明記されていない)と、
「現状報告書(仮称)」を元に、
貴方の正当性を主張するのが良いと思います。
なお、仮にそのような報告書を認めないというのであれば、
別の事務所を探すことも一考すべきですが、
ただ、どうしてもそこが良いのであれば、
非公式であっても、きちんと現状報告書を作成しておくべきでしょう。
貴方、貴方の事務所の歴史の1ページにもなるでしょうから。
(その際、新聞や子供、家族など、「時間が証明できるもの」を、
一緒に撮影しておき、場合によってはデジカメではなく、
ネガなどが保存できるものなど方が、良いかも知れませんし、
デジカメの場合は、事務所のサイトなどで公開し、
自分以外の方法で、時系列を証明できる手段を考えた方が良いでしょう)
投稿: Fudosan.JPサポート | 2006年12月21日 (木) 03:48
こんにちは。質問者のデザイナーです。
お返事が大変遅くなりまして、申し訳ありません。
内容、大変参考になりました。
年末のお忙しい中、ご丁寧にお答え頂きまして本当にありがとうございます。
お陰さまで、こちらが分りづらい業者さんの立場も少し想像が付くようになり、
一呼吸置いた事で頭が冷えて現実的に整理されたと思います。
以前から契約書にサインをしに行く日を明日(26日)と決めているため、
これから、契約書の添付書類として提出する書類を用意する事は出来ないのですが、
家賃発生日から入居(2月末)まで約4~5週間ありますので、その間、
床工事の報告書と一緒に、「現状報告書」とカーペットの保存方法が分る書類を作成・提出しようと考えています。
業者側のスタンスは前と変わらないと思いますのでダメ元ですが、
(もしかしたら、構えてしまっているのは最初から私だけなのかも知れません)
退店時の復帰工事の材料として認めてもらえるかはあまり期待せず、
相手の立場にも立って、資料は退店時の判断材料にという事で、
今から了解を迫る形にならないように気を付けます。
ただやはり、ほとんど新品状態で捨ててしまうのは勿体無いですから、
常識の範囲で考えて無理のない提案を出来れば良いなと思います。
報告書のアプローチは自己流になりそうですが、
他の方の参考になればと思いますので、またご報告させて下さい。
明日は契約です。
気持よく新しいキャリアのスタートが切れればと思います。
私の感情に任せた拙い質問に、逐一丁寧に答えて頂いたスタッフ様に改めて感謝申し上げます。
お陰さまで大分不安が取れ、前より楽な気持ちで契約に臨めそうです。
ありがとうございました。
投稿: デザイナー | 2006年12月26日 (火) 05:45
ご丁寧なご連絡、有難うございます。
すでに契約を決めているのであれば、
まず、仲介事業者とのわだかまりを解消されると良いと思います。
(前回までのお話を元に、貴方が誤解していた部分や、
仲介業者の立場などを理解して、
上手く、先方を立てるような形にして、ザックバランに話せば、
貴方の側に立ったアドバイスなどをしてくださる可能性も、
あるように思われます。
それから、頭に来た場合であっても、
感情的になってしまっては、交渉ができませんので、
頭に来た時こそ、冷静になって、
●「矛盾点」を探し、
●その説明方法を考え、
●貴方の要求を相手を説得する
ということに努めると良いでしょう)
また、原状回復に関しましては、
どんなに契約書で約束事を決めておいても、
出て行く際に問題が生じる場合も多いため、
入居までの間に、きちんと「現状(原状)」を記録しておくことが、
後々のトラブルを防ぎますので、必ず行ってください。
特に今回、タイルカーペットに目が行きがちですが、
タイルカーペットだけではなく、借りる時点で、
返却時に誤解が生じそうな部分
(=すでに劣化しているにもかかわらず、
返却時に貴方の責任にされそうな部分)
を、細かく記録しておくことが重要です。
なお、余談ですが、タイルカーペットが接着剤などで固定されている場合、
そのまま積み重ねますと、表面がべとべとになってしまい、
使い物にならなくなってしまう場合もあります。
そのため、施工業者まかせにするのではなく、
きちんと立ち会って、綺麗に保管できるよう、
貴方が積極的に動かれることも大切です。
(=ご自身の新しいオフィスですから、
経緯を眺めることも楽しめると思いますよ)
それでは、無事、契約なさった際のご報告を、
我々も楽しみにしておりますので、契約、頑張ってください。
投稿: Fudosan.JPサポート | 2006年12月26日 (火) 17:27